[さっきと言い、今と言い。
目の前の瞽女の歯に布着せぬ物言いは、聞いてて何とも小気味良い。
…しかしだけれど"花街へ"、と。そう告げられた言葉>>41には、困ったように首を傾げはしたけれど。
彼女の内心での品定め>>42など、此方の知る所ではありやしない。
気付いたとしても、気付かぬとしても。何方にせよ、女はただこの語らいの時を愉しむばかり。]
――……ふふ。さァて、どっちに見える?
鼠小僧が盗むようなものを…持ってるように思わはった?
[問いの形か、そうでないのか。
図る事は出来ずとも、言葉を返す事くらいは出来るだろう。
此方の言葉にまるで跳ねる鞠のように、ぽいぽい返される言葉はやはり…あゝ、やはり心地が良い物だ。
だから、去ろうとした背に掛けられた声>>43には、ほくそ笑むように足を止め、そしてカランとひとつだけ下駄を鳴らした。]
(56) 2015/01/18(Sun) 20時頃