103 善と悪の果実


【人】 靴磨き トニー

―差し出された手―

[眸の調子が可笑しい。
作り物の眸から、ぱたぱたと何かが零れ落ちている。
肺も可笑しくなったらしい。
呼吸がうまく出来なくて、僕は小刻みに殺した息を吸い上げる。
その姿はまるで、子供が嗚咽をかみ殺しているような。]

 っ…、……

[刹那。
痛んだ髪に落とされる手のひらは、生きていた時に僕の頭を撫でたもの。
頭をゆっくりと上げる。]

(55) anbito 2012/10/01(Mon) 03時半頃

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