――アジト――
[ 幸い、キャデラックは追跡と銃撃から早々に逃れて、アジトへの路をそこそこ順調に進めた。目立った被害は車体の尻にいくつか穴が空いてしまったくらいで。適当な場所――無人ガソリンスタンドや雑貨店の駐車場の脇を通過し、住宅街の穏やかな道路に入り込む。キャデラックの停車地点は、至極まともなガレージの中。崩れかけたコンクリ塀の傍だ。
その頃には男の右足から力が抜けている。
ブレーキを踏むのがやっとだった。
差し出される支えの申し出は正直ありがたい]
おい、慎重にやれよ、丁寧に丹念に注意深くだ
……――っ て、ぃてて
――テメェ、真っ先に逃げたってな?
臭ぇオレンジ汁垂らしてねえだろうな?
[ 治療もまたありがたい。ピンクの肩を借り辿り着いたアジトで、パープルの治療を受ける。そしてオレンジに悪態をつく。そこでようやく、緊張の解けた息を吐いた。深く]
(55) 2016/04/08(Fri) 23時頃