―― 真ん中の車両・テーブル席のどこか ――[この客の頭の中は、まだ音でいっぱいになってはいない。「いつもの」やつ――目の前のグラスの中身を目に見えて(これは比喩表現だが)減らしていくごとに、浮かんでいくメロディを楽譜に書き留めているからであるが。最初の一杯の中身だけでなく、後々注文したみなみのうお座のフライも、順調に皿の上から減ってきている。時に譜面の形をととのえるべく鼻歌まじりにメロディを、伴奏を、それらの合間にある音を自ら歌う。そんなことばかりしているから音は厚みを増し、むしろピアノが2台いるんじゃないか? というレベルになってくる]
(53) 2022/08/07(Sun) 02時頃