― アジト ―
[時間の感覚はいまひととき酷く曖昧で、いや曖昧というよりは混迷して、死の直前にあるというそれの如くに長く長く感じられたようでもあり、一種の短さに感じられたようでもあった。
ともかく車は無事アジトへと辿り着いた。
男はよろめくに近いふらついた歩きで中に入り、まず洗面所へ向かって、吐き戻す代わりのように、震える手で水をすくっては何度も飲み下した。
そして、埃っぽいソファーに、崩れ座り]
……、……
[背を丸め、顔を半ば覆うようにしながら、右へ左へ、揺れる視線を場にいる面々へと流す。
なんで。零れた言葉には、一際揺れたそれを]
…… な…… な、なんで。
なんででしょう。何故でしょう。どうして。
なんで……で、でしょうね。そう、そ……そう、……
け、計画、は、正しくて。
計画、通り、の、計画通りだったなら……その、
予定通りだったなら、そうなります、けれど……
けれども、予定の通りにだったなら……
(53) 2016/04/08(Fri) 23時頃