―ジリヤのお店(日暮れ時)―
……ん。
[どさり、と屋根に積もった雪が落ち、その音で目を覚ます。
辺りはすっかり薄暗い。
ゆらりと立ち上がると、木箱の横に置いてあるランプに火を灯した。儚げに揺れる明かりは、ふんわりと店内を照らす。
所狭しと、並べられた商品の数々。その殆どが、ジリヤの手作りだった。誰かに喜んでもらいたくて、誰かの記憶に残りたくて、大切に大切に作り上げた作品たち。
元々は、裁縫は少し好きな程度だった。床に臥せていることが多い自分は外で遊ぶことも碌にできなくて、暇に任せてせっせと何かを作っていた。
ある日、ふと気が向いて、その一つを幼馴染の少年にプレゼントしてみた。きっとあまり出来が良くなかったであろうそれを、彼は存外に喜んでくれたのだ。
…嬉しかった。はじめて、誰かの役に立てた気がした。
そうして、時は流れて]
(53) 2013/12/16(Mon) 21時半頃