[しかし、繁華街の隅に或る訳でも無い此のBARが何故伽藍堂としているかには、幾つかの理由があるのだが———。既に何屋か分からない様なごちゃごちゃとした表の看板、(本来の本業であるBARは勿論、”情報売り〼”、”怪奇研究所”、探偵だとか、将又薬屋だとか、色んな看板が立て並び過ぎて、何が何だか分からない。)が恐らく一番の正解だろう。
何せ、この近くに或る、
『音匣』と比べても客の具合は謙虚に違った。]
…… あ、
[ふと、何かと思い出したように声を挙げる。]
[目に付いたのは空になったウィスキー・ボトル。]
[そう言えば、カウンターに仕舞っていた酒はもう品薄だ。]
[それでも、こんな店でも、時折好き者の客が来れば酒も無くなる。(男もまた、流し込むかのように口にするから、もあるのだが。)]
まだ、バックにはあったっけ …… と。
(53) 2016/06/14(Tue) 14時頃