> 十年前:1
「天使候補生」に選ばれた当時の伶は信心深く善良な子供であり、間違いなく天使となれる素質を持っていた。
しかし、自分の身を巡って天使と悪魔・堕天使の争いが幾度も生じることとなる。
そのことに胸を痛めていた伶の前に一人の悪魔が現れて、伶へと取引を持ちかけた。
『君はこのまま行けば天使になれるだろう。
天使としての力と翼を得たならば、その片翼を差し出すと約束しろ。
そうすれば天使たちとの争いをやめてやろう。』
あまりにも悪魔側にとって都合の良い取引であったが、当時の伶は目先の争いを止めたい一心からそれを受け入れてしまった。
だが、すぐにその取引が神にばれて天使になる資格を剥奪されてしまう。
悪魔との約束も果たすことができずに見放され、伶はその後、天使でも悪魔でもない「人生」を歩むことが決定付けられた。
また、このことを切欠とした天使・悪魔の小競り合いも生じたようだ。
この時の愚かな選択とその結果を、伶は今でも悔やんでいる。
また、それと同時に、「善かれと思ってした行動を認めてもらえなかった」ために彼らのことを嫌っていた。
(51) shirone 2020/01/22(Wed) 01時頃