― 回想、帰宅→ ―
[た、た、と跳ねるようにアパート前に辿り着けば、マフラーに鼻先を埋めながら、やれやれとばかりに息を吐いた。
いつになく、充実した一日だった。我が家の扉前へ疲れ切った足を動かせば、赤いフードの青年が、今まさに部屋の鍵を差し込もうとしていた>>27か。]
(……誰だっけ。――てっきり、空室だとばかり)
[疲労感で緩んだ思考は、声をかけるという選択肢を運んでは来なかった。
ただ、その姿が扉の向こうへ消えるのを見送ると、自分もまた緩慢な動きで鍵を開け、最低限に開いた扉の先に身体を滑り込ませた。
乱雑にブーツを脱ぎ捨て、マフラー、コートと玄関近くにかけたハンガーに移す。
そして、真っ先に足を向けたのはシャワーだった。程なくしてそれを終えれば、長い息と共にベッドへと文字通り、転がり込む。
足首をゆるゆると回しながら、枕に顔を埋めて。そろそろ洗濯の頃合いか、と軽い予定を脳裏に流しては、疲労の乗った瞼を閉ざす。
そうして、いつしか――例えば、チャイムが鳴らされれば目覚めてしまうぐらいの、浅い眠りについたのだった。]
(50) 2014/10/03(Fri) 06時半頃