―― 回想:牧師さまと裏庭にて ――
あ、そっか。牧師さまは知らないんでしたね。
[村に馴染み過ぎて、前からいるもんだと勘違いしてしまっていた。青年はぽりぽりと鼻の頭を掻きながら、気恥ずかしそうに語る。]
俺、小さい頃肺が弱くて、しょっちゅう発作を起こしてたんです。
それで、空気の綺麗な所に越した方が良いってなって。
両親は二人とも働いてて、街を出るわけにはいかなかったから、俺だけ此処に…ばっちゃんのとこに預けられたんですよ。
[綺麗に手入れされた庭を眺めながら、ぽつりぽつりと自身のことを話した。]
寂しくないわけじゃないけど…でも、
俺この村が好きだから。
…だけど、チャールズさんがハーブの歌を思い出すって言ったとき、きっとあの歌だって。
母さんが歌ってくれた歌だって思って。
聴きたくなっちゃったんです。
[無理言ってすみません、と、情けなく笑う。こんな風に、打ち明け話みたいなこと、するつもりなかったのに。伊達に牧師はやってないな、なんて、そんなことを考えていた。*]
(46) 2015/04/19(Sun) 03時頃