[動けないものたちがこの世界を狡猾に生き抜くために進化を遂げ続けているということについては、すとんと腹に落ちた。
蟲はもちろん恐ろしい。つい先ほどだって生命の危機を覚えたばかりだ。ラルフが駆けつけてくれなければこの世界とはお別れしていただろう。
植物の進化はどうだっただろうか。毒をもつもの、人に擬態するもの、霞のようにそこにあることがわかりにくいもの。触手のように巻きつかれ、命を落としたものの姿を見たこともある。
かつて植物の種子は、より遠くへ移動するために生き物にあえて“食われて”いた。魚卵も別の泉に移動するために同じ手段をとるものもあったという。
けれども、フェルゼの今の言葉はどうだろう。まるで植物が意思を持ち、繫栄のために生き物の身体を殻として使用しているように聞こえる。
それは、かつて針金虫が蟷螂を乗っ取って水場へと導いていたことを髣髴とさせた。]
(44) 2022/12/31(Sat) 22時半頃