― 御渡市・駅前商店街 ―
[ある日の放課後。
学校からの帰宅途中、私は商店街に足を向けた。日はまだほとんど傾いてもいない時間。夏服に変わったセーラー服。手に提げたスポーツバッグには、梶の葉を象った校章がプリントされている。]
こんにちはー。
おじさん、いつもの入ってる?
[今日の目当ては小さな本屋。
顔なじみの店主のおじさんが、予約している月刊誌を取り出してくる。市内で定期講読してるのはたぶん私を含めて片手にたりるかどうかだろう、その雑誌名は『月刊レムリア』といった。]
ありがとー。
今月号出るの、楽しみにしてたんだ。
春頃にねー、ここの編集者の人、取材に来てたんだって。
[表紙に躍る「総力特集・アミシャーブ最新レポート(>>#0>>#1>>#2)」の文字。後編には御渡神社の関係者情報として、私が話した内容も少し出てくるらしい。正直、今一番の楽しみがそれだったりする。]
……っと、いけない。はい、お代金。
[へへ、と笑いつつ受け取って、壁の時計を見た。駅前から家の方へ出るバスの時間までは、まだしばらく。
どこで読もうかなと考えつつ、おじさんに手を振って本屋を出た。**]
(44) 2016/06/14(Tue) 13時頃