[お話として語ってしまえば、あんまりにありきたりな話。
通っていた幼稚園の卒園に合わせて、引越しをしようとお父さんが言った。
引越しの意味もよく分かっていなかった自分は、ただぼんやりとそれを受け入れていた。
いざ家を出て行くことが身に染みて分かったのは、本当に家を出るほんの少し前のこと。
なんとなく、ずっと一緒にいられると思っていた友達と、(以前から聞かされてはいたはずなのに)唐突にお別れしなきゃならないと知ったあたしは、泣いて、泣いて、逃げ込んだ先は、家が近くていつも一緒に遊んでいたほーちゃんのところ。うちのお父さんとお母さんが迎えに来て、ほーちゃんのお母さんが応対に出ている間、乱暴に言葉少なく慰めてくれたほーちゃんは、お姉ちゃんにからかわれるのも構わずあたしの頭をずっと撫でていてくれて。
結局、そのすぐ後に、引っ越してしまって、手紙を書いたり、自分で遠くに出かけたりっていう発想もできなかった幼いあたしは、そのまま離れ離れになってしまっていたけれど。
なんだ、つまりは、あの時から、あたしは―――]
(43) 2012/03/08(Thu) 22時半頃