――――――……!!
[抱き寄せられた、とわかると思わず体が強張った。
濡れてしまうわ、と止めようと思ったのに、唇が動かない。
だってこの腕が心地いいことを、私は良く知っていて。
この腕に抗えない>>4:22ことも、私は思い知っている。
謝ってほしいわけじゃないのに、やっぱり私は首を横に振ることができなくて、ただ、詰めていた息をは、と吐き出すと、フィリップの肩に額を乗せた。
今いるこの場所は、まぎれもない外の世界で、その証拠に、甘い匂いと香らない造花の代わりに、土と森の匂いがする。
けれど呟くような彼の歌に耳と、埃っぽい住処の匂いは、第二図書室の朝を私に思い出させた。
あの施設を懐かしく感じることなんてないと思ったのに、たった数日前のことなのに、あの朝の光景が、今の私には愛しく感じる。
抱き寄せてくれる背中に私の腕を回したいのに、さっきのよそよそしい態度が棘のように刺さって、どうしてもできなくて。
ちくちくと胸が痛むけれど、彼の歌声と体温は、私を確かに落ち着かせて、いつしか涙は止まっていた]
(41) takicchi 2015/07/18(Sat) 22時半頃