「おばちゃん。鍵、直ったよ。 ハリガネで開けるのは素人には無理だよって、坊によく言っといてね」ザックは道具を箱に収め、鍵の修理代金を受け取ると依頼人宅を後にした。父は盗賊団を再興することはなかったが、祖父から受け継いだ技の全てを息子に託した。おかげで、彼はこうして村の便利屋のような仕事をしながらなんとか暮らしていけている。道すがら、ふと、家々の硝子に映る自分の顔が目に止まる。目鼻立ちは記憶にある父の顔によく似ていた。肖像画でしか見たことのない祖父にも。しかし……、おやじはもっと老け込んでいたな、と、ザックは思った。彼はもう父の亡くなった歳に近い。
(41) 2016/09/15(Thu) 12時頃
sol・la
ななころび
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