― 回想:桃園学園・保健室 ―
本当に、手のかかる子供たちだよ。
[それは、生徒達が去った後>>0:24>>0:25のこと。
メアリーの立っていた辺りに、もやもやとした黒い霞のようなものが漂っている。
彼女の頬を掠めた指先で払われたまま、所在なさげに漂っていたそれを、今度は荒々しい手つきで掴んだ。
通常、人には見えないものだが、若林はこの手のものを見ることができる。触れることも。]
うちの生徒にくっついてきたのが運の尽きだね。
ここは理事長の庭だ、害虫にはお引取り願おうか。
[氷のような声色で告げて手を離すと、靄は慌てたようにひゅるりと逃げていった。怨念にも至らない、ごくごく弱い負の感情の集まりのようなものだ。
たいした害ではないが、放っておけば何かのきっかけ――例えば怪異だとか、黒い夕暮れ>>18だとか――で寄り集まって大きくなることもあるし、近くにいると体調を崩す生徒もいる。散らしておくに越したことはない。
養護教諭は児童の養護を司るものである。
であれば、怪我や病気は勿論、あらゆる危険から生徒達を守るのが務めであると、若林佳は考えていた。*]
(40) 2022/09/02(Fri) 23時半頃