[蝶番が微か音を立てて空気の流れを感じる。フランシスの呼びかけ>>2:519に顔を上げてゆっくりと頷いた。] ――…あァ、おかえり。[フランシスとラルフの方から漂う微かな硫黄と石鹸のにおい。肩に掛かる少しの重さと体温にふっと目を細めた。時間を経たことにより少し落ち着きを取り戻してはいたけれどフランシスからの仄かな甘えは珍しく、ドナルドの鼓動がはやまる。下ろした利き手が、半ば上がる。炊事場で抱きとめたように、彼の背に腕をまわそうとしている己に気付き、動きが止まった。軽く、拳を握って、耐えるように眉を寄せる。凭れるフランシスの耳朶、首筋に目が奪われる。] ――――……。[フランシス、と吐息まじりの掠れる音色が微か漏れた。]
(39) 2014/11/19(Wed) 14時半頃