最もそれも、母からそう聞かされていたというだけで、父とは一度も会ったことはないのだがね。
けれど、確かに私には"ひと"にはない力がある―――…
[そうして、書棚から視線を戻すと、掌にふっと息を吹きかけて己が幻像を作り出して見せた。
それはゆらゆらと揺れる"ひと"を惑わす幻覚の霧。]
…この力は父から受け継がれたものだと考えられるし、その系統から判断するに、母の言っていたことは嘘ではないと思っている。
ああ、ちなみに母は人間。
本当に普通のただのひとだ。
そして、そのせいもあるのだろうが、どうにもこの力、父達とはまた、別種のものみたいなんだな。
[あやかし達は仲間同士、念を通して会話が出来るというが、己が念はどうやら"ひと"にも"あやかし"にも届かないらしい。
己と同じような存在が居れば、と考えたこともあるが、そのような存在に出会ったことは一度もなかった。]
だから私は、人間半分、妖怪半分のそれこそ存在自体が逢魔時みたいなものになるのだろうかなぁ。
(38) 2011/09/15(Thu) 21時頃