−路地裏・回想− >>8:168
[そこで見た光景は、血の海に崩れている複数の黒いマントを着た人物たちとヴェス、音を立てながら焼けてゆく石畳。何故溶けているのかはわからないが、その部分に触れないようラビを急いで抱き上げ、倒れているヴェスに駆け寄った。…の声に気付いたのか、こちらに顔を向け、呟く声が確かに聞こえた。]
“もう一度帰りたい……懐かしい、俺の故郷へ”
[そうして目をゆっくりと閉じていくヴェスの側まで近寄り、しゃがみこむ。]
君の故郷へ、か。
本当に奇遇だね、実は君の故郷に少し用事があってね。
ヴェス、これも何かの縁だろう、他ならぬ君の最期の頼みだ。
君も連れていってあげるよ。
今日たくさん話してくれた、君の大事な、友人と共に。
[そう微笑みかけて言ってはみたが、こちらの声はもう届いてはいないだろう。腕の中のラビが、小さく鳴いた。]
(36) 2011/11/25(Fri) 11時半頃