―前日・夜―
[自室にこもり酒を呑む。賽は投げた。後はどんな目が出るのか待つだけだ。
アイリスかクラリッサがセシルの部屋を訪れて水を飲む――そんなことが起きないように、入り口付近に陣取って、耳をそばだてていた。
それからどれくらい経っただろう?直ぐだったかもしれないし、何時間も立っていたかもしれないがよく覚えていない。隣の部屋から人が倒れたのか、何かが落ちたのかは分からないが音がする。
その時が来たのだと思い、立ち上がる。部屋の外に出れば、今の物音で二人が起きてこないかと周りを見回す。が二人が起きてくる気配はしない。
セシルの部屋の前に立つ。心臓は、さっきから五月蝿いくらいに鳴りっぱなしで、静まり返るこの宿に鳴り響いてるのではと錯覚してしまいそうになる。
アイリスとクラリッサを起こさないように控えめにノックをするが、返事はない。
意を決してドアを開ける]
(32) 2013/08/05(Mon) 22時頃