[労働が終われば、食堂に向かい食事を取る。
食事の所要時間はさほどかからない。
けれど、食事後、仕事仲間と机を囲みながら雑談することが好きだった。
でも、子供達に「早く」と服の背を引かれれば、断りきれずに席を立つ。
そうして、裁縫場から貰ってきた白い布切れを丸め、かんたんに留めただけの球を投げ合う。
何度やっても上達しないし、その度にからかわれるのだけれど。]
もっと別の人、誘えばいいのに、なぁ……
[ぼやきながらも断れないのは、一回り年下の彼らにすら強く物を言えない、その性格のせいか。
――― もう少し前は別の名で呼ばれていた気がする。
けれど、少年の一人が目立つ赤銅色を指差して「赤毛!」と明るい声を上げるものだから。
今や自分を他の名で呼ぶ者はいない。
指先を掠め、はるか後ろへ飛んで行った白い球。
追いかける為に走り出す、その足だけは、遅くはない。]
(32) 2011/09/25(Sun) 00時半頃