[放った矢は、少し落ちて4時の位置。続けて最後の1本も射ると、弓を立て掛け一旦正座して弓掛を外し]
はいりまーす
[道場内に1人しかいないため、意味をなさない声を掛けて安土へと走り。的から引き抜くと矢尻を丁寧にタオルで拭う。始めた時はまだ夜明けまもなくて暗かったそらも、今はすっかり明るい]
……やっべ。そろそろ片付けないと
[穴だらけになった的をそのまま看的と呼ばれる、安土脇の個室に仕舞うと、同じく穴が空いて崩れた土を専用のへらで丁寧に均し、その他の道具もてきぱきと片付けてシャッターを閉める。人手があれば簡単な作業だが、すべて1人でこなすとなればそれなりに時間がかかる]
今日も、誰も来なかったなあ
[ため息をつきそうになるのをぐっとこらえて、顔と手を洗って思わず顔を顰める。矢羽が擦れることでぼこりと歪に膨らんでいる親指の関節部分に、薄く血が滲んでいる。小指の下、掌の腹の部分もいくつか硬くなっている。へたくその証だ]
……
[練習用のジャージから制服に着替えて、入口に飾られた神棚と道場に礼拝をして鍵を閉めた。教室に向かう前に売店の自動販売機に向かう]
(31) 2014/09/30(Tue) 20時頃