[カリュクスの波動は、《/dev/null》のほんの僅かな死角――男が脚をつけている地面を通じて男に当たったようだ]
告げるだけで何もしない傍観者が憎い。破壊の限りを尽くす神が憎い。絶望しか見えない未来が憎い。世界に毒を撒き散らす風が憎い。人の力を越えて驕る科学が憎い。真実を隠すまやかしが憎い。何も救えない無力な自分が憎い。視野の閉じた盲目が憎い。他者の宝を強奪う暴力が憎い。罪深き物を産み出した狂気が憎い。人間の絶望すら肴にする化物が憎い。憎い憎い殺してやる、殺して、殺して、殺して、一緒に死、約束、俺より先、置いて、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、俺を置いて、どうして殺して、どうして殺してくれなかっ、嫌だ、一人は嫌だ、一緒に、約束、ナユ、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、一緒に死、生きて、生きてる、死、違う、生きて、ナユ、生きて、心臓もうないけど、嘘つき、死なせない、嫌い、俺が殺す、ナユ――
[呪詛を吐く体力も尽き、端末《ナユ》も紅い画面の警告を発して消えた。
《/dev/null》も、映し出されていた映像も消え、男はその場に*倒れた*]
(31) 2010/09/17(Fri) 01時頃