[耳を撫でる三味線に、唄う声に目を細め。
自信をそして誇りを持って唄う声は、聴いていて何とも心地良い。
"曰く、男に盗めぬ物は無い"
正義の義賊を唄う歌に、僅かに滲んだ羨望の色にはほんの少しだけ――誰にも解らぬ程度にだけ、唇を歪めてはしまっただろうか。]
……あら、冷たい。
唄うてる時には、あんなに生き生きしてたんに。
[銭と共に気まぐれに掛けてみた言葉に返った声の素っ気なさ>>28と言ったら何だろう。
その唇に浮かぶ嘲笑に肩を竦めて苦笑しながら、向けられた閉じた瞳にはぱちと目をひとつ瞬かせ。
"キミも大変やねぇ"、なんて。投げてしまった言葉に、彼女は気を悪くしてしまったかもしれないけれど。
さてさてそうして、余り邪魔をしても悪いだろうかと、落とした腰を浮かそうとしたのなら。
足元から聞こえた声に女は、思わずクスリと笑みを零す。]
(30) 2015/01/18(Sun) 14時半頃