[こんな田舎だと人付き合いがないなんてことはまずなくて。
聞きたくなくてもうわさ話は耳に入ってくる。地蔵が壊されている。外から悪いものが入ってくるぞという話がクラスの中であった。馬鹿馬鹿しいわね。樅と卒塔婆の村よ、鬼なんか逆に入ってこないわ、と怖さを減衰させるために考えてみたら、そもそも卒塔婆が並び立つ様子が怖いと、元来弱虫な鈴を負の思考に陥らせた。
木々を抜け、日なたに出ると、遠くに綺麗に光って、小気味良く揺れるおさげの少女が遠くに見えた。>>20]
……???
[あんな子この辺りにいないよね?と立ち止まってうんうん唸ってみるも、熱さによってじわりと出てくる汗によって一旦うへぇと女の子らしくなく呟く。そこではっとした。
兼正の娘なんだ。きっと。]
ほへぇ…綺麗だなぁ…
[彼女はまるでお人形さんの様で、年の頃は多分私と同じくらい。向こうの方がずっと女の子らしいけど。
本当に兼正の人なら、怒られちゃうかもしれないけど、仲良くなりたいなぁと、朧気に考えたのだった。]
(30) 2013/12/03(Tue) 21時半頃