――、…俺、は
[ “突き放せば――”
図星を付かれたような感覚に、微かに息を飲み込んだのには気付かれただろうか。硝子箱の向こうで首を擡げるそれが脳裏に過っては、逃げるように視線を落とす。
透明の表面からか、雨粒が地面へと落ちかかるのを見ては。次いで誤摩化すように表情を戻した。
――示すのには冷えた肩が離れ>>20、言葉をなぞるように鋭い色がこちらを刺す。]
……欲しいなら追いかけるよ。
――行方不明になっても。
[ やがて腕を絡ませ告げられたのには、押し出すように呟いた。何もしないままに苛立つのは、お伽のそれに対してじゃなく、――ただ己自身へだったなら。
その腕がするりと抜けて、見知らぬどこかへ行くのを拒む様に肩を寄せた。静かに顔を傾ければ、その視線が絡む事はあっただろうか。
掠れた不格好なそれが、僅かに羨望じみた色を含んでいるのには、聡い相手にすれば見通されていたか。
ただ前を向くその顔へ、目を細めたのは習慣からではなく。また先ほどの嫉妬めいた気持ちからでもなかった。]
(29) 2014/10/07(Tue) 07時頃