[シビル>>19の膝上の布地、その縫い目の形を見れば
問い掛ける前から、その答えも幾らかは察せられた。
「縫い目が乱れていたら心も乱れているんだって」と
今は亡き女から、何時か教えられたことがあったから。]
……そうかい。
[改めて、抑揚ない声音で告げられたその答えを聞き、
慰めの言葉も添えず、男はそれだけぽつりと返した。
それからほんのしばらくの沈黙の後、
彼女から言われたこと>>20に瞬き、己の身を一度見下ろす。]
あぁ、悪い。
俺が風邪でも引いちまったら如何しようも無いしな。
[「俺が」と口にしたのは、他の若者たちの具合を
案じるところがあったから。
ずぶ濡れになっていたことを漸く意識した男は、
しゃくり上げていたミッシェルにも、誰にも何にも触れずに、
ひとり、広間を出る扉の方に足を向けた。]
(28) 2013/06/04(Tue) 17時半頃