[四弦の音色を確かめつつ、ふと、思い馳せるは遠い日の事。
自身が師によって見出されたのは、妖に滅ぼされた村。
他には動くものは何一つなく、ただ、深手を負った自分とこの楽琵琶だけが残されていたという。
当の自分には何故そうなったのかも、自分が誰なのかの覚えもなく。
ただ──喰らわれかけた記憶と、それにまつわる恐怖だけを抱えて、接する全てを拒絶していた]
……思えば、昔はよぅ逃げ回っとったなぁ。
[力を持ちながら、それを制する術も知らず。
唯一残った記憶に脅かされる子供を、師は甘やかす事無く、現実へと向き合わせた。
その厳しさ故に反発し、幾度となくその許から逃げ出そうと試みたものの、何故かいつも先回りされていて。
なんで、と聞いたら、「お前みたいな危なっかしいのは、野放しにできん」と返されて。
その言われ方が何だか悔しくて、いつか認めさせてやるんだ、と。
退魔の技を学ぶと決意させたのは、そんな意地と反抗心だった]
(27) tasuku 2015/02/18(Wed) 22時頃