『…そっかあ。残念だな。槇村さんに触れないの。』[少しだけ無理をしたような明るい声と、目の前に差し出されたティッシュの箱。ありがと、とくぐもった声で言って、二、三枚拝借した。涙(ついでに鼻水も)を拭って、本田を見る。彼女は笑っていた。思わず、といった風に漏れた笑い声に、訳が分からずきょとんとする。笑みの形に緩んだ双眸は、確かにこちらを見ていて。それだけで、何も考えられなくなる。身体に残る震えなんて何処かへ行ってしまった。]『あたし、嬉しいの』[言葉をくれる形の良い唇が、澄んだ声が、猫みたいな瞳が]『多分、すっごく』[ああ、]『特別な事なんじゃないかなって、』[好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。きみが、こんなに。]
(26) 2014/03/26(Wed) 15時頃