─喧騒の中─
[祭囃子を聞きながら、鼻歌混じりに人混みを行く。
並ぶ出店をひやかしたり、声が掛かれば調子良く挨拶をする。
『久し振り』、初対面だろうが見知った顔であろうが、男の唇から紡がれるのは同じ音で。
飲みかけだった麦酒は、その辺で喋った中年が欲しそうにしていたからくれてやった。]
ああ、ああ、楽しいねぇ。
祭りってのは矢っ張り好い。この日があるから、生きていけるッてもんだぜ。
[呵呵と笑う片手には綿飴。ふわふわとした見た目にぼんぼりの灯りが反射した薄桃色は、まるで桜の花霞だ。
機嫌良く歩いていると、少し前を行く人影がよろめく。>>3
すいません、と謝罪の声を上げながらたたらを踏んだその背中を、とん、と後ろから軽く支えた。
覗き込んでみれば、この豊葦原ですらあまり見かけない変わった服装。さては迷子の外神か。]
おっと。……久し振りだねぇ、お嬢さん!
よたよたしてちゃ危ないぜ?大丈夫かい?
(25) 2015/04/18(Sat) 22時頃