[ゆっくりと唇から紡がれるタイトル>>15に男は数度瞬きをした。
彼女の予想通り男が読んだことのない物語だったのだ。
喜色を隠すことなく男は「へえ」とただ一言。短い感嘆に滲み出る喜びのまま、自身の本来のお目当ても手にする。]
物語を語るに上手いも下手もないさ。
[彼女を誘いながら促すように言葉を重ねれば、何やら考える素振りを見せていた頭が動き、さらりとした髪が揺らぐ。
同意を得られた男は後ろから着いてくる少女と共に本屋を後にする。
そして秋風と共に紡がれる耳にしたことのない御伽噺に心地良さげに瞳を閉じて。]
――硝子、だなんて。愛なんて案外脆いみたいだね。
[彼女が滞在する建物か、その付近か。何処まで許してくれたのかは分からない。
けれども別れ際、男はそう零して笑み一つ。]
素敵な時間をありがとう。
たった一日とはいわずにまた、会えた時に名前を教えておくれよ。
[塞がれた両手の代わりに首を傾けて挨拶。そして男も自身の帰路に着いた。]*
(25) 2014/10/03(Fri) 02時半頃