―― 一階 ――
[ 冷気の中、漂う鉄錆の匂いが鼻をつく。
個室へ向かう。匂いは濃くなった。開け放たれた扉。迷い事無く駆け込む。
その景色に、目をきつく閉じ、音が鳴る程に歯を噛締める。
握り締め震える拳を、叩きつける事はどうにか堪え、壁にどんと押し付ける。]
何なんだよ……
くそっ……
[ 拳を戻し、その手で顔を覆う。感情は言葉にならない。失ったものが大き過ぎた。
自分の投票が原因なのか、或いは、疑惑を皆に伝えなかったからか、迷いと自責。
だが、それよりも。]
ベネット、キャサリンを連れてく。そしたら、直ぐに戻る。
――おい、大丈夫か!?
[ 床に蹲り、嗚咽を漏らすキャサリンを抱き上げる。軽い。こんなにも軽かったのかと思う。
抵抗は無かった。ただ、嗚咽し、涙を流していた。
華奢な体を車椅子に座らせると、広間へと車椅子を押した。]
(24) 2010/02/25(Thu) 15時半頃