[逃げ出して、けれど今は人に会っても上手く話せる気がしなかった。台所には誰もおらず、ほっと一息つく。
そして窓から見えた人影。金髪の、話したことのない男の姿。]
………
[―― ころさなきゃ。
さっきまでの自分なら、気にも留めずにいたかもしれない。
けれど今は。あの子が受けた行為を、自分も受けそうになった。
そして――男。この二つの条件が、少女の正常な思考を奪う。復讐を、あの子の為に全てを壊さなければいけない。台所にあったナイフを、持ち手をハンカチで包んで持ち出した。]
(そう、すべては、あのこのため)
[気付かれないよう飛び出せば、外で空を見上げていた男の背後に近付く。
月明りできらりと輝くナイフ。もうすぐ、赤に染まり人を孤独に貶める道具。少女を狂わせるもの。
吸い込まれるようにそれは男の左胸を貫く。
何とも言えない声を上げて倒れ伏した男。金の髪が赤色に濡れていく。
酸素に触れ、やがて黒ずむ血を眺めることはせず、少女はそのままナイフを置き去りにして公民館の中へと戻って行った*]
(23) 2014/03/05(Wed) 19時頃