[学校に行くのをやめた。ひどく無気力だった。
久々に話した兄が、お下がりと称して漫画やパソコンをくれたので、それを使って時間を潰した。
画面の中に、今の自分と然程変わらぬ年の母を見つけた。
古い映像の中で跳ねる母に、それでも妹と同じものを見る。
そんな時間の使い方をしている自分に嫌気がさして、素性も知らぬ相手とのやり取りにのめり込むのはすぐのこと。
面白い話も何もなくても、性別と年齢だけで持て囃される気分は悪くなかった。
「かわいい」って、言われたことがなかった。いつも何かと競っていた。戦っていた。
甘ったるい言葉に乗せられ、煽てられて、顔を晒す。
べとべととした欲望や中傷も、画面越しなら痛くもない。
馬鹿なことをしている自覚はあったが、気づいた時にはもうブレーキは効かなくなっていた。
簡単に崩れ落ちるお城でも、少しは空っぽな自分をごまかせる気がして。
安く自分を切り売りして、ふと冷静になる。
知り合いにバレたらどうしよう。ああ、死んでしまいたい。
無為な1日を終え、夜が訪れるのが怖い。
北仲瑛美が目を覚ましたのは、そんな夜を迎えた直後だった。]
(21) 2015/02/06(Fri) 02時半頃