―― その後 ――
[そのとき何が起きたのか。それは敢えて語らない]
[織部寧人の遺骸が発見されたのは、捜索が始まってかなり時間が経ってからだった。損傷も酷く、土砂に覆われ、身につけていた遺品も少なかった]
[変わり果てた、という言葉にふさわしい]
[身元確認に駆けつけた家族は、3人。
寧人と良く似た両親と、華奢に和をかけた、けれどくるくると大きく表情の変わる中学生]
[遺体が発見されたとき、こんなものはお兄ちゃんではないと母が言った。遺体の胸ポケットから、煙草とライターが見つかったと聞いて父も同意した。歯医者にかかったこともなかったので、歯形から身元照会も不可能だった]
[――ただ、奇跡的に遺体のごく近くに埋まっていた、なぜかビニル袋に何重も包まれた携帯電話を弟が確認して、身元が確定された]
[浸水はしていなかったが、衝撃でほぼ壊れていたそれ。
それは家族に返された後、一度だけ電源が点いて、沈黙した]
[―― ショーの全ては、それでお終い**]
(20) khaldun 2011/05/25(Wed) 22時頃