―御渡市内・住宅街―>>16
[ 先生が無事でよかった。
私の心がそう思うと共に、もう一つ別の安堵が沸き起こる。弱肉強食の掟にだけ囚われてしまう私は居ないのだ、と。人間として育ってきた18年間は消えてはいないのだ、と。]
お宮の奥なら、大丈夫だと思うんだけどね。氏子さん達も幾らか避難してきたっていう話、までは聞けたの。
[ 神社近くに住んでいた人々だけが、運良く避難が間に合ったというのがきっと実情なのだろう。
夜が明けて以降はそれらへの応対に追われてか、通信事情の問題でか、家族とは連絡が取れていなかった。もし他の理由があるとしても、考える気はしなかった。]
あ、私は一人じゃないよ。
あっちに車停めてて。友達ともう一人、千秋って人と居るの。
召喚アプリ、私は家庭の事情で違うんだけど――
[ まゆちゃんは三月まで中学生だったし、きっと先生も憶えてるかな。彼女の本名を口にして、停車した辺りを示した。前に立って、こっち、と歩いていく。]
待雪ちゃん――まゆちゃんはそのアプリ、持ってるって。
[ 軽四を停めた位置まで戻ると、傍の自販機に五百円玉を投入する。冷えた飲料を四本買って、それぞれに手渡した。*]
(17) 2016/06/18(Sat) 03時頃