― 10年前 ―
[魔眼、というものがある。上位の吸血鬼が持つとされる精神作用系の力だ。吸血鬼の位によるが、解呪法や対抗法もあるものだろうか。
彼が魔眼の虜となったのは、10年前よりも更に数年前。
殺した。言われるが侭に、人を殺し、異能を殺し、吸血鬼への敵対者を殺した。
彼の異能は獣化。古くは御伽話の中に存在する人狼、ライカンスロープ、デミヒューマン等と言われても来た能力。
望まれれば獣に変貌し相手を生きたまま喰い殺しさえした。吸血鬼に味方した堕ちて穢れた獣に慈悲を垂れる神など、最早いるまい。]
予想より呆気なく入れたけど、
やっぱり本拠地の勢力は侮れないね、吸血鬼様?
…良いんじゃない。僕も腕が鳴る。
脆弱な人間達の血による宴は華やかな方がいい。
[くつくつと哂う。まだ年若い青年は、片腕を毛深く鋭い爪持つ凶器に変貌させ嗤笑した。吸血鬼が這入れぬ場所でも、異能の力のみ持つ者なら這入り込めもしよう。例えば、千砂倉の要となる場へも。]
(17) 2015/01/16(Fri) 20時半頃