[机の上、置き去りにされた一冊の本がパラパラ捲れる。
風に踊るカーテンを通る薄ら日のような柔い光は、誰かの手によって綴られた刹那の物語を照らしていた。
–––––キィ。軋んだ音を立てて開いたのは図書館の扉。一歩、控えめなブーツの音が天井にこだまする。
カウンターを抜けて、図書館の奥へと進む足音の主は沢山の物語が詰め込まれた棚の間で、静かに息を吸い込んだ。
朝露の香りを含んだ優しい空気を運んでくれる本達が、クラリスは好きだ。
気持ちよさに腕を目いっぱい広げて伸びをする……と、同時に吹いたのは悪戯な風。
…の長いスカートが舞い上がり、眠気を貼り付けた顔を叩いた。
いくら下に履いているとはいえ、羞恥に慌てふためきながらお転婆なスカートを整える。]
っもう!煽られてスカートなんか履くんじゃなかっ………おやまぁ。
[ひとりぼっちの本の存在に気が付いたのは、風を運んだ窓を叱り付けるように見た時瞬間。]
(17) 2014/10/01(Wed) 02時半頃