―淫売宿屋上―
[ソーニャの演説(>>3)は断片だけは聞き取ることが出来た。
眼下を見れば、怒れる市民の何人かがその心を打たれたのか、こちらへ移動してくるのが見てとれる。
……なるほど、こうして無名の娘が、革命の象徴へと変わっていくわけか、などと妙に文学的な呟きを脳裏に浮かべれば。足は自然に彼女の元へ向かい、両手は拍手を打っていた]
……いい演説だった。同志ソーニャ。良い手本を見せてもらえたこと、感謝する。
[そう彼女を評してから、やはり冷静な口調で。先ほどのソーニャの、切れた言葉(>>0:93)を思い出しながら]
そういえば先ほど、僕の事情を気にしていたね。
せっかく同志と呼び合えた身だ。この際だから話しておこう。
[僅かに気取った様子を見せて、彼は自分の事情を話し始める]
僕の自己紹介がどこまで聞こえていたかわからないから、最初から話そう。
僕はイリヤ・アレクセイヴィチ・クラシコフ。エリアスと呼んでくれても構わない。一応、作家をしている。
恥ずかしながらそこまで売れているわけではないのだけど……それでもなんとか、作家業で食いつなげてはいる。
(16) 2014/09/04(Thu) 20時頃