― 深夜:屋敷の庭 ―
[この高天原に現れた二柱目の不浄の目には、闇夜を照らす月明りは届かない。
ただ、虚ろはじっと宙を睨み]
いっておいで
[その言の葉を合図に不浄なる半妖の側にある闇が蠢き、何かが羽ばたくような音がする
暗闇に潜み、天には届かないそれは――二つ頭に一つ足の烏。この高天原には存在し得ない筈の妖(あやかし)
生温い風を残し、影の中を縫うように飛び去って行った]
[本当にそれで祟り神を見付けられるなどと思ってはいない。
それが叶ったとて、自らの力もまた祟り神に何の影響も及ぼさないだろう。少なくとも、今は。
しかし、どうして愛しき妹の身が危険に晒されていて何もせずいられるだろうか?
何か手掛かりだけでも、そう思うのが兄だろう。
神々が、祟り神が妖の存在に気付く可能性が生まれると分かっていても、そうせざるを得なかったのだ。*]
(14) 2013/08/14(Wed) 01時頃