―雨の境界線を越えて―
毎度ながら、潰えるな。
[馬車の中で座り込みながら、ぼそりと呟いた。
雨の境界線を越えて以来、鼻の詰まったような感覚に陥ってしまう。
すべての臭いが洗い流されてしまう、というわけではない。
馬車に自身の臭いを滲ませる>>5など、完全に流されると思っていれば、やったりはしない]
この雨の臭いには、慣れん。
[他の者達が感じとれているかどうかは分からない。
いや、そもそも、何らかの理由でヴェラの感覚器が狂わされてしまっているだけのせいなのかもしれないが。
この雨には、雨そのものに、人とも魔物ともつかない臭気がこびりついているように感じてしまう。
もっとも、直接この身に浴びずに済んでいることは、幸いだと言えるだろうが。
ノアには着実に近づいている。
この馬車の中にいられるのも、廃村の入り口までとの約束にはなっている>>6が。
濡れずここまで辿りついて負い目か、同業の者が近くにいれば同乗を促そうかと、嗅ぎ分けづらい状態と陥った鼻を、ひくつかせた]
(14) 2013/06/09(Sun) 21時頃