[懐の中の狸が、ほんのりと熱を帯びた気がして、坊主はそれをつまみ出した。しかし、目前にぶら下げてみても、やはり人形はただの布人形のまま。ただ、その表情が、妙に元の持ち主の特徴を正確に捉えているのに気付かされて、苦笑が漏れる]狸め、自分で作ったわけではなかろうな?[小さく呟いて、それを、日向の身体の傍に置く。何かを意識してのことではなかった。だが、或は、喰らって呑み込んだ光の中に、何かの力が残っていたのかもしれぬ]ノウマク サマンダ ボダナン バヤベイ ソワカ...[紡ぐ真言が風天のものであったのも、坊主の意識の外のこと]
(13) 2014/02/21(Fri) 22時頃