― 回想 ―
“罪科は己の中にあり”?
……忘れてしまえば何をしても構わない、とでも仰るおつもりか!?
[イワンの処分をめぐる議論の中。
そう切り出したのは、後方支援部隊長……教会の司祭だった。]
記憶のない者には責任など追求できない。それは、認めましょう。
だが、記憶が無いならば余計に、いつ裏切るとも知れぬ地雷を抱えるような物ではありませんか!
私は、彼の処分を望みます。
責任を問えず、何が起こったのかも解らぬならば、それこそが最後の慈悲と考えます!
[議論の場は二つに分かれた。
生かすべきという主張は、欠如した記憶を戻す事で情報を得ようとする者、或いは司祭のように問えぬ罪を責めるなかれと諭す者から。
殺すべきという主張は、余計な芽を残すまいとする者や、この事件で失った者を忘れえぬ者から。
男もまた、その一人。
結婚したばかりの妻は、聖歌隊の子供達に菓子を差し入れに向かい……そのまま、還らぬ者となった。]
(13) 2015/01/16(Fri) 20時頃