―回想・大通り―
[カラコロ、カラコロ。小気味好い下駄の音を響かせながら此方へと近付いてくる友人>>0:403に、相も変わらぬ表情を向けて。
こうも雑に対応出来るのも、相手が彼だからだと言う事は、重々承知の上だけれど。]
北欧叙事詩…あぁ、入っていたのか。
それは助かる。今度礼に酒でも持って行けばいいか?
[差し出された袋を受け取りながら、紡ぐのはそんな口約束。まぁ仮にこの友人が酒が飲めぬのだとしたのなら、きっと男は何時もの軽口のつもりで言ったのだろうけれど。
声が少々浮かれているのは無意識の事。楽しみにしていた本が手に入ったのだから、これが浮かれずにいられようか。
時折、この友人と会って神話やまやかしの話をするのは、男にとっても仕事外の数少ない楽しみの一つでもあったから。
そうして"一冊分にしてはやけに重たい"紙袋を受け取ったのなら、次いだ問いにはチラリと今しがた会ったばかりの俳優の方を見やりはしただろうか。
紙袋の重さになど、勿論気付かないままに。]
(12) 2014/10/03(Fri) 02時頃