─回想・寂れた教会─
[教会に辿り着くと、礼拝堂には寄らずまっすぐ裏手の墓地へと向かう。降り注ぐ月明かりと、かつて訪れた時の記憶を頼りに、墓石の間を縫うように移動する。時々墓石に蹴躓きそうになりながら、目的の墓標に辿り着く。
屈んで墓標に指を這わせ、刻まれた名前を確認すると、その上から抱くように覆いかぶさる]
……ローズマリー…。
[石に刻まれた名前を呼び、息を吐いて目を閉じた。
自らの手を汚す覚悟と共に、もう二度とここには来ないと決心したのに。
墓石から伝わる温度は冷たい。触れている部分はじんわりと温もり始めるが、奪われる熱の方が大きい]
君が居る場所は今、暖かいの…?寒くて辛い思い、していないかな…
[背徳の証である黒マントは途中で捨てた。夜気が全身を包み、身体を冷やしていく。
このまま眠れば、朝が来る頃には君と同じ場所に行けるかな…?
これまでの重圧から逃れるように、意識を手放すと眠りに落ちていく。
夜警の墓守がその姿を見つけるまで、男はその場に蹲ったまま、石のように動かなかった]
─回想終了─
(11) 2011/11/24(Thu) 21時頃