[おいてかないで、と彼は私に言った>>4:42のに。
まるで彼の方が置いていってしまったよう。
この場合、置いていってしまったものは、愛情? 思い出? 約束?
そこで、はたりと私はもう一度瞬きをする。
――――約束?
妙に引っかかるその言葉。
そういえば、自由になったら、とてもやりたいことがあったような気がするのだけれど。
嗚呼、なんだったかしら]
――――――……あ、ら?
[思い出せないことというのは、思い出せないでいる間、とても気になるものだけれど、実際に思い出してしまえば大したことでないことの方が多い。
だから私の持論は、思い出せないことは、忘れてしまう程度のことなのだと。大したことではないから思い出せないのだと、そう考えるようにしているのだけれど。
……それならどうして、私は今、泣いているのかしら。
フィリップによそよそしくされたから、だけではないような、気がする。
じくじくと痛む胸。口元を押さえて、私は涙を止めようとした。だって、他人行儀に心配されるくらいなら、いっそ何もされない方がましだもの。
けれど、涙は言うことを聞いてくれなくて。
せめて無表情で、良かったと思う]
(10) takicchi 2015/07/18(Sat) 11時頃