【人】 奏者 セシル

　――そして――

[祝福の雨のように、降り注ぐ音楽の欠片。　　　　　　　　　　　　　　　　　　――この中に失われた己の音楽も、あるのだろうか]

ああ、そうだ。
……ヴァイオリン、俺はもう弾けないんだ。

[いまだ律儀に友の手にある、己の半身、　　　　　　　　　　　　　　　　彼は覚えているだろうか、その音色その旋律を]

それ、お前にやるよ。今度、弾き方、教えてやる。
……ああ、まだ留学途中だったか？
親父も姉上も元に戻ってるはずだし、俺も少し見聞を広めに行くのもアリかもしれないな。

[まさか決闘にも礼儀作法があるとは思わなかった、
虎のバターと件といい、世界はまったく謎に満ちている]

――…いや、城に戻ったら止められる、か？

[悪巧みの顔をする猫の王子の上にも]
[優しく、懐かしく、温かい、音楽の雨が降る**]

(8) sen-jyu 2010/03/29(Mon) 16時半頃