― 回想/酒屋にて ―
――所縁のある場所、ねェ。
[呟いて人差し指を自らの唇に押し当て、沈黙。所縁のある場所といえば、壱区全体と他に――、何処かあっただろうか。
あァ、いきなりにも躓いてしまった。思えば来る日も来る日も金を稼ごうと町を行き来していただけで、それ以外の思い出なんかない……気がする。
どうしたものか、とやんわり唇を噛んで。所詮、籠の外を知らない鳥だったのだと目を伏せた。
続く男の言葉には『あァ、そうか』と静かに相槌を打ち。再び押し黙る。
つまり普段思い出しもしないものを鼠は盗んだっていうことだろうか。奴が欲しがるような高価なものがあるわけがない、筈。
そんなものを持っているのなら直ぐに売り払っているに違いないのだ。]
あァ……、
何だか難しいねェ、
こりゃァ、“探し物”というより“謎かけ”って感じかね、
(8) 2015/01/22(Thu) 02時頃