もう片付けて良いよ。
[ようやく眺めるのに飽いたか、傍らに控えた従僕に声をかけた。
主に呼ばれるまでひっそりと影のように後ろに佇んでいた従僕は、屈強な男数人に命じて「果実」を鎖から下ろし、粗布で覆って部屋から運び出した。
その容貌ゆえに無造作に摘み取られ、踏みにじられた哀れな「果実」は、まだ息をしているかどうかを誰にも気にされることなく、通用口の扉の奥へ消えた。
青年は一部始終を全く気に留めず、優雅に組んだ足を下ろした。
テーブルにゴブレットを置くと、立ち上がり、白貂の毛皮の襟をかき寄せる。
一時の熱狂が去れば、石造りの部屋は随分と寒い。
従僕たちに片付けを命じることも、ねぎらいの声もかけることなく、ごく自然にもう一方の扉ヘ向かう。
装飾の施された扉は、従僕の手によって、それが当たり前であるかのようにさっと開けられた。**]
(8) 2014/09/02(Tue) 12時頃