[笑い声に、渋面は作られたものから自然なそれへ。
相手への負感情を表すためのものから、今一瞬の苛立ちと、半分くらいの劣等感。スパイス程度の憎しみは、対象が記憶の隅にある別の男。ルーカスに向けられるものではない、と掠めたそれはすぐに消えた]
臆病、で 何が悪い
[台詞とは裏腹に、視線は穴の開きかけた爪先へ。
慎重さと呼ぶには、少し意識が足りない、まさに臆病さをサイラスは確かに持っている。それは、拭いきれない性質だ。逃れられない生まれのせいだ。そしてそれが、今サイラスの首を緩やかに絞め続けている。
囁かれた声。その口調は余裕を演じていないように聞こえ、は、とサイラスは顔をあげる。
図らずも、そのせいでルーカスの目的を助けることとなったかもしれない。
―――咄嗟に振り払った手は、狭い通路故、壁に思い切り打ち当てることとなる。それもこれも、原因は臆病さだ]
(7) 2015/11/30(Mon) 00時半頃